日本の生業と、世界の似たサービス > 傘職人(金沢和傘)
起源は平安時代の菅笠にさかのぼるとされ、傘として発達したのは江戸時代。金沢の和傘産業は江戸期に地場産業として広がった
| 日本|傘職人(金沢和傘) | 世界|西洋の洋傘職人(アンブレラメーカー) | |
|---|---|---|
| アプローチ | 孟宗竹の骨に和紙を4重に貼り重ね、荏油や柿渋で防水し、開いた時の丸い張りと骨の美しい放射状を見せる | 鋼鉄の骨(親骨・受骨)にナイロン・ポリエステル地を張り、軽量・高強度・大量生産に振り切る |
| 使う道具(日本側) | 孟宗竹、和紙、荏油、柿渋、糸 | |
| 使う素材(日本側) | 孟宗竹、五箇山の楮を用いた和紙 | |
⚠ 「使う道具」「使う素材」は日本側のみ調べています(世界側は同じ条件で確かめられていないため、 世界側の比較値は作っていません)。
もうひとつの世界の対比例=東南アジアの油紙傘職人(タイ・ボーサン等、竹と紙・油を使う点で技術系統が近い参考比較)
日本は竹の産地に恵まれ、和紙と油という「貼って塗る」防水の知恵が発達した。西洋は産業革命後の製鉄技術で「折り畳める鋼鉄骨」に振り切り、携帯性を追求した
| 事業者数(現在) | 確認できていない |
|---|---|
| 事業者数(ピーク時) | 118軒 |
| ピークの年 | 明治・大正時代の最盛期 |
| 統計の基準年 | 明治・大正期 |
| 後継者不足度 | ★★★★★ |
| 統計の出典URL | https://www.icnet.or.jp/dentou/rare/08.html(石川県・伝統工芸ふぁんクラブ「石川の伝統工芸」・取得日2026-08-18) |
明治・大正期に118軒あった金沢の傘屋が生んだ町の景観と、竹と和紙だけで作る雨具という選択肢が失われる
洋傘の普及による需要激減、後継者が実質1軒のみという極端な集中、竹・和紙という材料の入手継続
数字はすべて、その場で出典の名前と取得日を添えています。確かめられなかったことは「確かめられなかった」と書いています。
石川県金沢市に、「松田和傘店」という和傘の店がある。明治29年(1896年)の創業以来、金沢和傘の伝統と技を守り続けてきたこの店は、明治・大正の最盛期には118軒あった金沢の和傘屋の中で、現在も残る唯一の和傘屋だという(松田和傘店公式サイト、取得日2026-09-15)。現在は三代目・松田重樹を中心に、職人たちの手によって伝統と技が受け継がれている(同、取得日2026-09-15)。
石川県の産業振興機関のサイトも、同じ経緯を伝えている。「明治・大正時代の最盛期には、金沢に118軒の傘屋があり、金沢傘の名で県内外に売られていた。しかし、昭和30年頃以降、洋傘が普及し、和傘の製造は激減した」(石川県「金沢和傘|石川の伝統工芸」、取得日2026-09-15)。118軒からの減少がいつ止まり、いま実際に何軒残っているのかという公式統計までは、今回の材料からは確認できなかった。ただし複数の紹介記事が「現存するのは松田和傘店1軒のみ」と揃って伝えている。
金沢和傘は、雨だけでなく重い雪にも耐える丈夫さで知られる。松田和傘店の公式サイトは、その理由を6つの工夫として説明している。骨組みを補強する「千鳥がけ」、傘の縁を補強する「小糸がけ」、傘の頭と柄をつなぐ「ろくろ」(粘り強いエゴノキ材を使用)、厚手の手漉き和紙(主に「純こうぞ」)、耐久性を高めるために4枚重ねにした「天井」、そして真竹よりも頑丈な「孟宗竹」を使った骨――この6点が、金沢和傘の"機能美"だという(松田和傘店公式サイト「特徴」、取得日2026-09-15)。
政府広報の英語版メディア「Highlighting Japan」の取材にも、同様の説明がある。骨は細身にせず、貼る和紙も厚手のものを使い、骨と骨の間には和紙にゆとりを持たせて貼る。特に傘の天井部分は和紙を四重貼りにするという(Highlighting Japan 2023年6月号、取得日2026-09-15)。雨傘の峰の部分には柿渋や紅殻を加え、防水性と防虫・防腐性を高めているとも紹介されている(同、取得日2026-09-15)。
材料は、かつて金沢周辺に群生していた孟宗竹と、五箇山の楮(こうぞ)を使った和紙だという(石川県「金沢和傘|石川の伝統工芸」、取得日2026-09-15)。竹も紙も、金沢という土地の近くで採れるものが使われてきたことになる。
松田和傘店の公式サイトによれば、一本の和傘を作るのに2か月以上かかるという。骨組みから和紙張り、色漆塗りまでの工程のほとんどを、特殊な部品以外はすべて一貫して手作業でこなす(松田和傘店公式サイト、取得日2026-09-15)。丁寧に扱えば、金沢和傘は半世紀ほど使い続けられるともいう(同、取得日2026-09-15)。
金沢和傘の製造は、紙の乾燥に適した温度・湿度になる3月に集中しているという記述もある(石川県「金沢和傘|石川の伝統工芸」、取得日2026-09-15)。一年の中でも作れる時期が限られていることになる。
Highlighting Japanの取材に対し、松田和傘店の職人・松本佳子さんは「伝統的な様式美にとらわれず、元々は着物の技法である加賀友禅の職人に絵付けを依頼するなど、異分野とのコラボレーションも積極的に行っている」と語り、「現在、和傘の購入者の9割が、県外及び外国の方だそう」と紹介されている(Highlighting Japan 2023年6月号、取得日2026-09-15)。2022年には、イタリアの工芸展「HOMO FABER」に日本の伝統工芸を伝える作品展示があり、松田和傘店も制作に協力したという(同、取得日2026-09-15)。
雨具としての和傘は、コンビニや量販店で買えるビニール傘・洋傘にほぼ置き換わった。それでも松田和傘店に注文が続いているのは、雨具としての実用以上に、インテリアや贈答品としての価値を求める人が多いからだと考えられる。
English: Kanazawa wagasa (Kanazawa oiled-paper umbrella)(A Kanazawa wagasa maker layers washi paper four times over a bamboo rib frame and seals it with oil and persimmon tannin, a construction now kept alive by a single remaining shop.)